2026年6月5日(金)・6日(土)の両日、東京大学生産技術研究所にて「駒場リサーチキャンパス公開2026」が開催されました。松山研究室では、研究の一環として、ワークショップ「台風制御技術、どこから考える? ― 立場から、『問い』を探す」と、ポスター展示「もしかする技術『台風制御』は何をもたらす?」を実施しました。ワークショップは、台風制御技術をとらえる多様な視点を探索する目的で、ポスター展示は、情報提供による来場者の受容態度の変化を探る目的で行いました。
■ ワークショップ「台風制御技術、どこから考える? ― 立場から、『問い』を探す」
本イベントは、2050年の実現を目指して研究が進む「台風制御技術」を題材に、参加者が自分の立場や価値観を見つめ直し、他の参加者と共有するなかで、新たに立ち上がる台風制御技術に対する“問い”を探る哲学対話型ワークショップとして実施されました。
会場には、直近の台風被害に関するニュースや台風制御技術の進捗状況を伝える壁ポスター、哲学対話関連書籍や地図などが掲示されました。
参加者は3枚の透明シートに、1)自分の立場、2)現在の台風がある生活、3)将来の台風制御が実装された場合の生活、を具体的に記載し、参加者間で共有しました。その後、参加者は、場に公開された透明シートの中から、興味を持った3枚を選び、それらが示す別の立場からの視点から気づいた新たな問いやコメントを付箋に記し、共有しました。
参加者からは、
• 「学校には行けるくらいの災害の方がいい。親も子守りをしなくて済む」
• 「実家の心配をする必要がある」
• 「アウトドアスポーツ。台風のドキドキ感を思い出した」
といった問いやコメントが寄せられました。
ワークショップ終了後には、研究内容や台風制御技術の技術的な仕組みや社会実装の可能性についての質疑が続き、関心の高さがうかがえました。
■ ポスター展示「もしかする技術『台風制御』は何をもたらす?」
B棟1階ピロティのポスター展示では、台風制御技術の概要、ELSI(倫理・法・社会的課題)の構造、研究室で進めているELSIマップの作成方法についての説明などを行いました。
来場者からは、
• 「技術の実現可能性はどの程度なのか」
• 「国際的な研究状況は?」
• 「制御による副作用や不確実性は?」
といった質問が多く寄せられ、技術そのものへの関心と同時に、社会的影響への不安や期待が入り混じった反応が見られました。
「問いボックス」を介した参加展示
ポスター展示の一角には、これまで松山研究室で実践を重ねてきた哲学対話から抽出された「台風制御技術に関する問い」を収めた問いボックスを設置しました。来場者は黄色(根源的問い)・青色(文脈依存・具体性の高い問い)のカードを引き、そこから思いを巡らせ、付箋に書いて掲示する体験を行いました。
来場者からは、
- 「社会全体で責任をとるとはどういうことか?」:「私は小学校3年生男子です。大人が責任をとってくれるので関係ありません。明日の給食の方が大事。」
- 「人間も自然の一部?」:「わたしは田舎に住む都会の学校に通う受験生です。人間も自然の一部!ただし人間と自然を全くの別物として扱ったり、比較することもできる。(あくまで人間の主観で)学問によって考え方は異なる・・・?」
- 「技術があることによって生じた選択・行動は自己責任?」:「科学技術の発展による影響というのは選択の時点では分からない部分も多々あります。また選択していない人々に悪影響がでるかも・・・?“自己責任とはいえない”が結論です。技術によって良いことがたくさんあるといいですね。」
といった付箋がポスター上に並びました。黄色の問いと青色の問いでは来場者にとって回答のしやすさが異なっている様子が見られ、今後のELSIマップの作成に参考になりそうです。
■ 今後の研究への活用
今回のイベントと展示を通して得られた知見は、松山研究室の研究に以下のように活かされる予定です。
- ELSIマップ作成:来場者の反応を踏まえ、より“誰でも入りやすい”問いの構造や分類方法を検討する。
- ELSIマップの評価手法の検討:ELSIマップを活用した対話の前後での思考の深まりを測定する手法の開発を進める。
- ELSIマップを活用した対話イベントの設計:参加人数の最適化、途中入退室の制限、技術説明資料の充実など、 “没入できる対話空間”の実現に向けて運営方法を見直す。
- 台風制御技術に関して提供すべき説明内容の検討
松山研究室では、今後も「社会の声で工学を豊かにする」という理念のもと、対話と研究を往復しながら、台風制御技術のELSIを探究していきます。
(執筆:松山桃世)