【報告】岐阜大学で「ひみつの研究道具箱」ワークショップを開催しました

 

ELSI/RRIと、総合知で挑む分野横断ワーク

 2026年4月6日(月)、岐阜大学 TOIC GIFU 1階にて「ELSI/RRIと、総合知で挑む分野横断ワーク」が開催され、松山准教授が岐阜大学所属の研究者・教職員を対象に「ひみつの研究道具箱」ワークショップを実施しました。

 「ひみつの研究道具箱」ワークショップでは、東大生研で研究が進められている萌芽的な研究・技術を紹介するカードを組み合わせながら、社会課題の解決アイデアを考えます。今回は、さまざまな専門分野の研究者が参加する場であったことから、単なるアイデア創出にとどまらず、ELSIやRRIの観点から研究開発の可能性やリスク、実装上の課題を対話的に検討することに重点を置きました。

 冒頭で、松山准教授がELSI(倫理的・法的・社会的課題)およびRRI(責任ある研究・イノベーション)の基本的な考え方について紹介しました。技術そのものの有用性だけでなく、その技術が誰にどのような影響を及ぼすのか、どのような価値観や制度と関わるのかを考えることの重要性を、参加者と共有しました。

 その後、参加者はグループに分かれ、ひみつの研究道具箱カードを使ったワークに取り組みました。まずアイスブレイクとして、パッケージに含まれる身近な「ピンチ」に対して、ランダムに選ばれた8枚の技術カードをもとに、ゲーム形式で解決アイデアを競いました。続いて、台風が激甚化する将来への対応策として、温暖化抑制/防災インフラ強化/台風制御の3つの選択肢からテーブルごとに1つを選び、52枚の技術カードから任意の枚数のカードを選んで組み合わせ、アプローチを具体化しました。

 

図1. ひみつの研究道具箱カードを用いた解決アイデアの一部

 

 後半では、岐阜大学の川瀬真弓助教が制作された「ELSIカード」を用いて、考案したアイデアを多面的に捉え直しました。技術的には有望に見えるアイデアであっても、想定外の利用、責任の所在、説明責任、透明性、社会的受容などの観点から見直すことで、より現実的で慎重な議論が生まれました。最後に各グループの検討結果を全体で共有し、終了しました。

図2. ELSIカードを用いた、アイデアに対する多角的な検討結果の一部

 

 参加後のアンケートには10名から回答を頂きました。以下に回答の抜粋を紹介します。

 

■ひみつの研究道具箱ワークショップを体験していかがでしたか。
・他の参加者の意見は専門分野が異なることもあり、自分一人では思いつかなかった視点や発想に触れることができた
・同じテーマに対しても捉え方や重視するポイントが異なることを実感でき、新たな気づきにつながった
・小さな科学技術を、全体性が生まれるようにつなぐ思考アプローチが学べた
・考える時間がたりず焦るばかりでした。しかし、考えている時間は苦痛ではなく、またグループの皆様の意見や発想をお聞きすることも楽しかったです
・アイデアの捉え方を他者に説明し,批判をもらうことは大事

■考えられる応用先・目的などをお聞かせください。
・看護実践、教育
・工学系の修士・博士の学生に対して行うと,このゲームの目的が達成できる
・頭をやわらかくする練習として小学生からやったらいい
・①応用先:研究者と企業の合同ws、目的:共同研究の検討・交流、
・②応用先:分野をまたいだ大学生の合同ws、目的:今後の研究キャリアや就職する分野のキャリアへの知識の拡大と意識づけ
・分野横断的なアイデア創出やブレインストーミングの場に応用できると感じました。研究や企画立案の初期段階において、柔軟な発想を引き出すためのツールとしても有効。

■良かった点をお聞かせください。
・違う背景の方々と平等な立場で意見交換できる
・知ろうとしなかった科学のテーマや技術の入り口を知ることができる
・発想の幅が広がるきっかけになった
・単に知識として技術を学ぶのではなく、組み合わせることで新たな発想を生み出すプロセス自体を楽しみながら体験できた点
・ELSIの必要性を考えさせるためには,今回のワークショップのように新しい技術を用いた社会課題の解決のプロセスを経てからでないと,様々な視点から考えるのは難しい
・カードに分けて提示して組み合わせるところは視覚的に分かりやすい

■改善点をお聞かせください。
・カードに書かれている説明だけではイメージができない参加者への支援があると良い
・はじめましてでやるのは苦手だったりするのである程度関係性のあるグループでやったらもっと盛り上がったのではないか
・現場でのファシリテートに負荷が重い
・スピード感をもってポンポンと意見を出してもらうかという部分の設計がもっと明確になっているといい
・ルール説明や進め方の例がまとまった簡単なブックレットのようなものがあると、初めて参加する人にもよりスムーズに参加しやすくなる
・ゲーム性を高める方向で工夫する余地もあるのではないか
・医療・看護・介護・生活に関するカードがあるいい/生物系のカード(遺伝子改変とか)が欲しい/カードに無い技術を使いたいときや人のため、ジョーカーがあってもいい

 

 今後も、教育、異分野連携、産学連携、地域社会との対話など、多様な場面での活用可能性を検討しながら、科学技術と社会をつなぐ分野横断的な対話の場づくりを進めていきます。参加くださった皆さま、ワークショップ実施の機会をくださった企画の皆さま、ありがとうございました。

(執筆:松山桃世)

2026年04月06日