【報告】TSUKUBA CONNECT #87 でワークショップを実施しました

 

 2026年5月29日(金)、つくばスタートアップパークにて開催された TSUKUBA CONNECT #87 の一環として、ワークショップ「Physical AI が切り拓く “もしかする未来” の話をしよう」を実施しました。会場には、高校生、企業関係者、研究・教育に関心をもつ方など、約12名が参加しました。今回のテーマは、Physical AI。Physical AIとは、現実世界を見たり、動いたり、物に触れたりしながら、人の暮らしや社会に働きかける身体性のあるAIのことです。自動運転、介護ロボット、配送ロボット、工場の自動化など、すでにさまざまな分野で活用が広がりつつあります。一方で、こうした技術が生活に入り込むと、便利になるだけでなく、人の行動、判断、仕事、学び方、人との関わり方も変わっていくかもしれません。

 

 ワークショップでは、松山研究室で開発している科学コミュニケーションツール「ひみつの研究道具箱」を使いながら、Physical AIが活用される未来像を参加者とともに描きました。

 最初に、参加者は「Physical AIが生活に入ってきたら、どんなことを助けてほしいか」を考え、グループで共有しました。移動、仕事、子育て、健康管理など、身近な困りごとを出発点に、さまざまな未来のイメージが語られました。

 続いて登場したのが、ペルソナカードです。参加者はそれぞれ、異なる立場の人物になりきりました。たとえば、工場で働く人、子育て中の人、一人暮らしの高齢者、物流現場で働く人、部活に励む高校生などです。同じ未来であっても、立場が変わると、便利に感じる点も、不安に思う点も変わります。「どこで」「何をAIやロボットが助けるのか」「その結果、何が便利になるのか」を整理し、未来のタイトルをつけました。

 さらに、Physical AIの便利さが“行きすぎた”場合に何が起こるかを考えました。行きすぎカードには、「AIが人を見すぎる」「AIが人を助けすぎる」「AIに人が任せすぎる」「人と社会が変わりすぎる」の4つの観点を用意しました。見守りが評価や管理に変わるかもしれない。助けが増えることで、自分で試す機会や失敗する経験が減るかもしれない。AIに任せるほど、自分の意思や責任が見えにくくなるかもしれない。こうした観点から、参加者はそれぞれのペルソナの立場で意見を出し合いました。

 最後に、「ひみつの研究道具箱」に含まれる、生産技術研究所で研究開発されている技術カードを組み合わせ、未来像を実現するためのアプローチと、行きすぎを調整するためのアプローチを整理しました。参加者は、技術カードを組み合わせながら、「何を可能にするか」だけでなく、「どのような条件ならその未来をより受け入れやすくできるか」まで考えました。

 

 今回のワークショップを通じて考えたのは、Physical AIの未来は、技術だけで決まるものではないということです。同じ技術でも、誰が、どこで、どのように使うかによって、その意味は変わります。便利な未来を、より多くの人が納得できる未来にしていくためには、技術の可能性とともに、立場の違い、行きすぎのリスク、それを防ぐルールや受け入れ条件を考えることが大切です。「ひみつの研究道具箱」は、研究現場で生まれる技術を、社会のさまざまな視点から考えるための道具です。今回の対話で生まれた“もしかする未来”が、参加者一人ひとりにとって、Physical AIをこれからどのように社会に埋め込んでいくのかを考える一つのきっかけとなれば幸いです。

 

イベントウェブページ:https://x.gd/eqPHk

(執筆:松山桃世)

2026年05月29日